鍼灸の聖典、霊枢あるいは鍼経の「終始第九」(法野)について後編

こんにちは。

尼崎で東洋医学南整体院をやっている南です。
本日は、鍼灸の聖典の霊枢または鍼経の「終始第九」です。
前編につづき、後編となります。

臨床を積み重ねるたびに、鍼経に対する理解力が異なってきます。

不思議なものです。なんと奥深く理解し、
この鍼経をを運用することの難しさを
噛み締めています。

この鍼経を理解し、運用するためには、
日本で発達した鍼灸、特に経絡治療の技を捨てて、読み込む必要性がでてきます。

そうしないと、その今まで習ってきたものの考えでおさまってしまい、鍼経を
応用することが困難になりまます。

自分で知っていることに範囲内でこの鍼経を理解し、
運用することになりますからね。

そうなると、この霊枢であり鍼経を理解し、
運用することが難しくなります。

本当に難しいです。

悪戦苦闘の上で、実際に臨床で既成概念に囚われず、
鍼を運用してきました。

この鍼灸はこれからの医療に必要なものであり、
この鍼灸は奥深い魅力があり、可能性があります。

ほとんどの病気を治す可能性がめちゃくちゃ在ることがわかりました。

役に立たないものは、交通事故、緊急を要するもの。開放骨折。大きい傷口。
命に今すぐ関わるもの、西洋医学が得意とするものはあまり役に立たない。

それ以外は遥かに、コストも安く、多くの人が考えるよりも効果があります。
ぜひ、研鑽を重ねていただきたいものです。

西洋医学に比べて、一〇倍位いいです。
この言葉うそと思うでしょうね。そういう私も西洋医学さまさまで約一五年間
信じてきました。必要なものと思ってきました。

しかし、臨床をすると、全然すごい効果や可能性がありました。

医療者がにはあまりにも効果が有りすぎて、お金儲けに向きません。
なおかつやればやるほど早く治ってしまいます。

鍼灸治療の魅力の一つです。

それでは、始めましょう。

今までの既成概念を捨てて、学んでいきましょう。

「終始第九」(法野)について後編

 

陰盛而陽虚.

先補其陽.後寫其陰.而和之.陰虚而陽盛.先補其陰.後寫其陽.而和之.

三脉動于足大指之間.必審其實虚.虚而寫之.是謂重虚.重虚病益甚.

凡刺此者.以指按之.脉動而實且疾者.疾寫之.虚而徐者.則補之.反此者.病益甚.

其動也.陽明在上.厥陰在中.少陰在下.膺腧中膺.背腧中背.肩膊虚者.取之上.

重舌.刺舌柱以鈹鍼也.手屈而不伸者.其病在筋.伸而不屈者.其病在骨.在骨守骨.在筋守筋.

補須一方實.深取之.稀按其痏.以極出其邪氣.

一方虚.淺刺之.以養其脉.疾按其痏.無使邪氣得入.

邪氣來也.緊而疾.穀氣來也.徐而和.脉實者.深刺之.以泄其氣.

脉虚者.淺刺之.使精氣無得出.以養其脉.獨出其邪氣.

 

陰盛にして而して陽虚す.先ず其の陽を補う.後ち其の陰を寫す.
而して之を和す.陰虚し而して陽盛ん.先ず其の陰を補す.
後ち其の陽を寫す.而して之を和す.

三脉の足の大指之間を動ず.必ず其の實虚を審らかにす.虚して而して之を寫す.
是れを重虚と謂う.重虚は病益々甚だし.

凡そ此れを刺すものは.指を以って之を按ず.脉動じて而して實且つ疾なるものは.
疾かに之を寫す.虚而して徐なるものは.則ち之を補う.
此れに反するものは.病益々甚だし.

其の動ずるや也.陽明の上に在り.厥陰の中に在り.
少陰の下に在り.膺(ヨウ)腧(ゆ)は膺に中(アタ)り.
背腧は背に中る.肩膊(ケンバク)虚とは者.之の上に取る.

重舌は.舌柱を刺す鈹鍼を以ってす也.手屈して而して不伸とは者.
其の病筋に在り.伸ばして而して屈せずは者.
其の病骨に在り.骨に在り骨を守る.筋に在り筋を守る.

補は須くすべし一には實に方って.深く之を取る.稀に其の痏を按ず.
以って極(スミヤカ)に其の邪氣を出す.
一には虚に方って.淺く之を刺す.
以って其の脉を養う.疾かに其の痏を按ず.邪氣の入ることを得しむる無かれ.

邪氣來るなり也.緊にして而して疾す.穀氣來なり也.徐にして而して和す.
脉實とは者.深く之を刺す.以って其の氣を泄す.
脉虚とは者.淺く之を刺し.使精氣をして出づるを得ること無からしめ.
以って其の脉を養う.獨り其の邪氣を出す.

 

刺諸痛者.其脉皆實.

故曰從腰以上者.手太陰陽明皆主之.從腰以下者.足太陰陽明皆主之.

病在上者.下取之.病在下者.高取之.病在頭者.取之足.

病在腰者.取之膕.病生於頭者.頭重.生于手者.臂重.

生于足者.足重.治病者.先刺其病所從生者也.

春氣在毛.夏氣在皮膚.秋氣在分肉.冬氣在筋骨.

刺此病者.各以其時爲齊.故刺肥人者.以秋冬之齊※.

刺痩人者.以春夏之齊.病痛者.陰也.

諸痛を刺すものは者.其の脉皆な實す.
故に曰はく腰從り以上は.手太陰陽明皆な之を主る.腰從り以下は.
足の太陰陽明皆な之を主る.

病上に在るものは.下に之を取る.病下に在るものは.高く之を取る.
病頭に在るものは者.之足に取る.

病腰に在るものは.之を膕に取る.病頭に生ずるものは.頭重く.手に生ずるものは.
臂重し.
足に生ずるものは.足重く.治病を治すとは.
先ず刺其の病の所從りて生ずる所の者を刺すなり也.

春氣毛に在り.夏氣皮膚に在り.秋氣分肉に在り.冬氣筋骨在り.
此病を刺すとは.各々其の時を以って齊(ザイ)と為す.故に肥人を刺すとは.
秋冬之齊を以って(深く刺)す.
痩人を刺すとは.春夏之齊を以って(浅く刺)す.

※齊(ザイ)=薬剤と同意。頭をそろえること。処方とかやり方の意。

病痛者.陰也.痛而以手按之不得者.

陰也.深刺之.病在上者.陽也.病在下者.陰也.癢者.陽也.淺刺之.

病先起陰者.先治其陰.而後治其陽.病先起陽者.先治其陽.而後治其陰.

刺熱厥者.留鍼反爲寒.刺寒厥者.留鍼反爲熱.刺熱厥者.二陰一陽.

刺寒厥者.二陽一陰.所謂二陰者.二刺陰也.一陽者.一刺陽也.

久病者.邪氣入深.刺此病者.深内而久留之.間日而復刺之.

必先調其左右.去其血脉.刺道畢矣.凡刺之法.必察其形氣.

形肉未脱.少氣而脉又躁.

痛んで病むものは者.陰なり也.痛み而して手で以って之を按じ得ずとは.
陰なり也.深く之を刺す.病上に在るものは.陽なり.
病下に在るものは.陰なり也.
癢(カユミ)のあるものは.陽なり.淺く之を刺す.

病先ず陰に起こるものは.先ず其の陰を治す.而して後ち其の陽治す.
病先ず陽に起こるものは
.先ず其の陽を治す.而して後ち其の陰を治す.

刺熱厥刺すとは.鍼を留めて反って寒と為す.寒厥を刺すとは.
鍼を留めて反って熱と為す.熱厥を刺すとは.二陰一陽.

寒厥を刺すとは.二陽一陰.所謂二陰とは.二つ陰を刺すなり也.
一陽とは.一つ陽を刺すなり也.
久病とh者.邪氣深く入る.此の病を刺すものとは.
深く内に而して久しく之を留む.日を間(ヘダテ)て而して復た之を刺す.

必ず先ず調其の左右を調える.其の血脉を去る.刺道畢る矣.凡そ刺の法.
必ず其の形氣を察す.
形肉未に脱せず.少氣して而して脉又た躁(サワガシ).

躁厥者.必爲繆刺之.

散氣可收.聚氣可布.深居靜處.占神往來.閉戸塞牖.魂魄不散.專意一神.

精氣之分.毋聞人聲.以收其精.必一其神.令志在鍼.淺而留之.微而浮之.

以移其神.氣至乃休.男内女外.堅拒勿出.謹守勿内.是謂得氣.

凡刺之禁.新内勿刺.新刺勿内.已醉勿刺.已刺勿醉.新怒勿刺.已刺勿怒.

新勞勿刺.已刺勿勞.已飽勿刺.已刺勿飽.已飢勿刺.已刺勿飢.已渇勿刺.

已刺勿渇.大驚大恐.必定其氣.乃刺之.乘車來者.臥而休之.如食頃.乃刺之.

躁厥のものは.必ず之を繆刺(ビョウシ)することを為す.
散氣して收めるべし.聚氣布くべし.深く居い靜かに處り.神の往來を占い.
戸閉めて牖(ユウ)を塞ぎ.
魂魄を散ぜず.意を專ら神を一にし.精氣を分かたず.
聞人の聲を聞くこと毋く.以って其の精を収む.必ず其の神を一つにし.
志を鍼に在らしむ.

淺く而して之を留め.微かに而して之を浮かす.以って其の神を移す.氣至る乃ち休む.
男は内女は外.堅く拒んで出すこと勿れ.謹み守って内るること勿れ.
是れ得氣と謂う.

凡そ刺之禁.新たに内れ刺すこと勿れ.新たに刺す内れること勿れ.已に醉い刺すこと勿れ.
已に刺す醉うこと勿れ.新に怒る刺すこと勿れ.

已に刺す怒ること勿れ.新に勞す刺すこと勿れ.已に刺す勞すること勿れ.
已に飽けば刺すこと勿れ.已に刺す飽くこと勿れ.已に飢える刺すこと勿れ.
已に刺す飢える勿れ.已に渇く刺す勿れ.
已に刺す渇くこと勿れ.
大驚大恐.必ず其の氣を定めて.乃ち之を刺す.車に乘りて來るものは.

臥して而して之を休め.食頃(ショクケイ)の如くに.乃ち之を刺す.
出行して來るものは.坐して而して之を休め.十里頃(ばかり)行くが如くにして.
乃ち之を刺す.

※牖(ユウ)=まど

食頃(ショクケイ)=一回食事をするくらいの時間。

凡此十二禁者.其脉亂氣散.逆其營衞.經氣不次.因而刺之.

則陽病入於陰.陰病出爲陽.則邪氣復生.

粗工勿察.是謂伐身.形體淫泆.乃消腦髓.津液不化.脱其五味.是謂失氣也.

太陽之脉.其終也.戴眼反折瘈瘲.其色白.絶皮乃絶汗.絶汗則終矣.

少陽終者.耳聾.百節盡縱.目系絶.目系絶.一日半則死矣.其死也.色青白乃死.

凡そ此れ十二禁とは.其の脉は亂れ氣散じ.其の營衞は逆し.經氣は次せず.
因って而して之を刺す.

則ち陽病陰に入る.陰病出て陽と為る.則ち邪氣復た生ず.
粗工察すること勿れ.是れ伐身(バッシン)と謂う.形體淫泆す.
乃ち腦髓を消(とか)し.津液化せず.其の五味を脱す.是れ失氣と謂うなり也.

太陽の脉.其の終るや也.戴眼反折瘈瘲.其の色白.絶皮して乃ち絶汗す.
絶汗し則ち終る矣.

戴眼反折瘈瘲の終るものは.耳聾し.百節盡く縱(ユル)む.目系絶す.目系絶すれば.
一日半則ち死す矣.其の死や也.色青白し乃ち死す.

※形體淫泆(ケイタイインシツ)=淫は欲望にふけること。泆は、ほしいままなこと。

戴眼(サイガン)=上目づかいになって眼球強直状態になること。

瘈瘲=瘈は強直性痙攣。瘲は弛緩性痙攣。

反折=背中は反り返る

少陽胆経は関節を主る。

陽明終者.

口目動作.喜驚妄言.色黄.其上下之經.盛而不行.則終矣.

少陰終者.面黒.齒長而垢.腹脹閉塞.上下不通.而終矣.

厥陰終者.中熱嗌乾.喜溺.心煩.甚則舌卷卵上縮.而終矣.

太陰終者.腹脹閉.不得息.氣噫善嘔.嘔則逆.逆則面赤.不逆則上下不通.

上下不通.則面黒.皮毛燋.而終矣.

陽明の終るものは.口目動作し.喜く驚し妄言す.
色は黄なり.其の上下の經.盛んなるも而して行かざる.
則ち終る矣.

少陰の終わるものは.面黒.齒長し而し垢.腹脹し閉塞す.上下ぜず.
而して終る矣.

厥陰の終わるものは.中熱し嗌乾き.喜く溺し.心煩す.
甚だしきは則ち舌卷き卵上り縮んで.而して終わる矣.

太陰の終るものは.腹脹り閉じて.息することを得ず.
氣噫し善く嘔す.嘔する則ち逆す.逆す則ち面赤し.
逆さず則ち上下通ぜず.

上下通ぜず.則ち面黒.皮毛燋げる.而して終わる矣.

まとめ

本日は

「鍼灸の聖典、霊枢あるいは鍼経の「終始第九」(法野)について後編」について

説明してきました。

第一~三は五行穴について

第4は五臓について

第5は陽経六腑について

第六は望診、予後

第七は、鍼の方法。

第八は感情や心こと。

第9は総合で六脈の陰陽の運用方法についてです。

ここまでは、霊枢の鍼経は根本原理です。

ここからは各論になっていきます。

本日も最後までごらんいただき、ありがとうございました。