鍼灸の究極の聖典である霊枢について説明しています。
霊枢は歴史的なことはさておき、鍼経と言われていました。
その鍼灸師と言いながらもそんなにも研究されて来ていませんし、
臨床では使うには結構ハードルが高いものがあります。
この鍼灸に携わて約15年になりますが、臨床が伴っていない時は
使い方が分からないことがたくさんありました。
あまり役に立たないものだと思っていました。
しかし、日本でよく研究されている難経ですが、
これを臨床で運用するにあたって難経だけでは
限界があります。
先輩たちが残してくれたもの以上に発展させることが
困難になり、改めて鍼経に取り組んでいます。
鍼灸の聖典、霊枢または鍼経邪氣藏府病形 第四
黄帝問於岐伯曰.邪氣之中人也奈何.
岐伯荅曰.邪氣之中人高也.黄帝曰.高下有度乎.岐伯曰.身半已上者.
邪中之也.身半以下者.濕中之也.故曰.邪之中人也.無有常.中于陰則溜于府.中于陽則溜于經.
黄帝 岐伯に問うて曰く.邪氣の人に中(あ)たるなり。いかん.
岐伯荅えて曰く.邪氣の人に中(あ)たる高きなり.黄帝曰く.高下に度有り乎.
岐伯曰く.身半ば已上とは.邪之に中るなり也.身半ば以下とは.濕之に中(あ)たるなり.
故に曰はく.邪の人に中(あ)たるなり也.常に有ること無し.陰に中るは則ち府に溜る.陽に中る則ち經に溜る.
黄帝曰.陰之與陽也.
異名同類.上下相會.經絡之相貫.如環無端.邪之中人.
或中于陰.或中于陽.上下左右.無有恒常.其故何也.
岐伯曰.諸陽之會.皆在于面.中人也.方乘虚時.及新用力.若飮食汗出.腠理開而中于邪.
中于面則下陽明.中于項則下太陽.中于頬則下少陽.其中于膺背兩脇.亦中其經.
黄帝曰く.陰之と與する陽なり.異名同類.上下相會し.經絡の相貫ぬき.
環のごとく端無し.邪之人に中る.或は陰に中る.或は陽に中る.
上下左右.恒常有ること無し.其の故何ぞや.
岐伯曰く.諸陽之會.皆面に在り.人に中(あ)たるや.
方に虚に乘じる時.及び新に力を用いる.若しくは飮食して汗を出す.
腠理開いて而して邪に中る.面に中る則ち陽明に下る.項に中る則ち太陽下る.
頬に中る則ち少陽を下る.其の膺背兩脇あたるも.亦其の經に中る.
黄帝曰.其中于陰奈何.
岐伯荅曰.中于陰者.常從臂胻始.夫臂與胻.其陰皮薄.其肉淖澤.故倶受于風.獨傷其陰.
黄帝曰.此故傷其藏乎.
岐伯荅曰.身之中于風也.不必動藏.故邪入于陰經.則其藏氣實.邪氣入而不能客.故還之於府.
故中陽則溜于經.中陰則溜于府.
黄帝曰く.其の陰に中たるやいかん.岐伯荅えて曰く.陰に中(あ)たるもの.
常に臂胻從り始まる.夫れ臂と與する胻.其の陰の皮薄く.其の肉淖澤(どうたく).
故に倶に風を受く.獨り其の陰を傷る.
黄帝曰く.此れ故に其の藏を傷るか.岐伯荅えて曰く.
身の風に中る也.必ずしも動藏を動せず.故に邪陰經に入りて.
則ち其の藏氣を實す.邪氣入りて而して客すること能わず.
故に之を府に還す.故に陽に中る則ち經に溜る.陰に中る則ち府に溜る.
※臂(ヒ)=前腕 胻(コウ)=脛
淖(シャク)=湿なり、雨後道路が泥状にぬかるみ行き悩む様。柔弱の意味。
澤(タク)=水溜まりが点々とつながっている湿地。水に潤う意味。
傷る=やぶる
黄帝曰.邪之中人藏奈何.
岐伯曰.愁憂恐懼.則傷心.形寒寒飮.則傷肺.以其兩寒相感.中外皆傷.故氣逆而上行.
有所墮墜.惡血留内.若有所大怒.氣上而不下.積于脇下.則傷肝.
有所撃仆.若醉入房.汗出當風.則傷脾.有所用力擧重.若入房過度.汗出浴水.則傷腎.
黄帝曰.五藏之中風奈何.岐伯曰.陰陽倶感.邪乃得往.黄帝曰.善哉.
黄帝曰はく.邪之人に中る藏いかん.
岐伯曰はく.愁憂恐懼.則ち心お傷る.形寒寒飮.則ち肺を傷る.其の兩寒に相感じ.
中外皆傷るを以って.故に氣逆して而して上行す.
墮墜する所有り.惡血内に留まり.若しくは大いに怒るところ有り.氣上って
而して下らず.脇下に積もる.則ち肝を傷る.
撃仆する所有り.若しくは醉って房に入る.汗出し風に當たる.則ち脾を傷る.
力を用いる所有り重きを擧げ.若しくは房に入り度を過ごし.汗出て水に浴す.
則ち腎を傷る.
黄帝曰はく.五藏之風に中るやいかん.岐伯曰はく.陰陽倶に感じ.
邪乃ち往くを得.黄帝曰はく.善き哉.
※「撃仆」とは突然の卒倒、ゲキフ
即や則は、直ちに、間を置かずに連接する時に使う。
黄帝問於岐伯曰.
首面與身形也.屬骨連筋.同血合於氣耳.天寒則裂地凌冰.其卒寒.或手足懈惰.然而其面不衣.何也.
岐伯荅曰.十二經脉.三百六十五絡.其血氣皆上于面.而走空竅.其精陽氣.上走於目.
而爲睛.其別氣.走於耳.而爲聽.其宗氣.上出於鼻.而爲臭.其濁氣.出於胃.走脣舌.而爲味.
其氣之津液.皆上燻于面※.而皮又厚.其肉堅.故天熱甚.寒不能勝之也.
黄帝問いて岐伯曰はく.首面と與する身形也.骨に屬し筋に連なり.
血を同じくし氣を合するのみ耳.天寒き則ち地は裂け冰は凌る.
其の卒に寒する.或は手足の懈惰する.然れども而して其の面衣ざるは.
何ぞや也.
岐伯荅えて曰はく.十二經脉.三百六十五絡.其血氣皆面に上る.
而して空竅に走る.其の精陽の氣.上って目に走る.而して睛と為す.
其の氣別れ.耳に走る.而して聽くを為す.其の宗氣.上って鼻に出る.
而して臭と為す.其の濁氣.於胃に出る.脣舌に走る.
而して味を為す.
其の氣の津液.皆上って面を燻じて.而して皮又厚く.其の肉堅し.
故に天熱甚だ.寒くとも之に勝つこと能わずなり也.
※懈惰カイダ なまけおこたること。
黄帝曰.
邪之中人.其病形何如.岐伯曰.虚邪之中身也.灑淅動形.正邪之中人也.
微先見于色.不知于身.若有若無.若亡若存.有形無形.莫知其情.
黄帝曰.善哉.黄帝問於岐伯曰.余聞之.見其色.知其病.命曰明.
按其脉.知其病.命曰神.問其病.知其處.命曰工.
余願聞.見而知之.按而得之.問而極之.爲之奈何.
岐伯荅曰.夫色脉與尺之相應也.如桴鼓影響之相應也.不得相失也.
此亦本末根葉之出候也.故根死則葉枯矣.色脉形肉.不得相失也.
故知一則爲工.知二則爲神.知三則神且明矣.
黄帝曰はく.邪之人に中る.其の病形いかん.岐伯曰はく.虚邪之身中るなり也.
灑淅して動形を動ず.正邪之人に中るなり也.
微なり先ず色を見る.身を知らず.若もしくは有り若すくは無なし.
若しくは亡なき若しくは存あるがごとし.形有りて形無し.其の情を知ること莫し.
黄帝曰はく.善き哉.黄帝問うて岐伯曰はく.余之を聞く.其の色を見て.其の病を知る.
命づけて明と曰う.其の脉を按じて.其の病を知る.命づけて神と曰う.其の病を問いて.
其の處を知る.命づけて工と曰いう.
余願わくは聞かん.見て而して之を知る.按じて而して之を得る.問いて而して之を極めん.
爲之を為すにはいかん.
岐伯荅えて曰はく.夫れ色脉と與する尺之相應ずるや也.桴鼓影響の相應ずるが如く也.
相失することを得ざるなり也.此れ亦た本末根葉の出候なり也.故に根死する則ち葉枯れるなり矣.
色脉形肉.相失を得ざるなり也.
故に知一は則ち工と為すを知る.二は則ち神と為すを知る.三は則ち神にして且つ明なりを知る矣.
※灑淅(さいせき)背中にに水をかけれられた様ぞわぞわするようなこと。。
桴鼓はフコ。
黄帝曰.願卒聞之.
岐伯荅曰.色青者.其脉絃也.赤者.其脉鉤也.黄者.其脉代也.
白者.其脉毛.黒者.其脉石.見其色而不得其脉.反得其相勝之脉.
則死矣.得其相生之脉.則病已矣.
黄帝問於岐伯曰.五藏之所生.變化之病形何如.岐伯荅曰.先定其五色五脉之應.其病乃可別也.
黄帝曰.色脉已定.別之奈何.岐伯曰.調其脉之緩急小大滑濇.而病變定矣.
黄帝曰.調之奈何.岐伯荅曰.脉急者.尺之皮膚亦急.
脉緩者.尺之皮膚亦緩.脉小者.尺之皮膚亦減而少氣.
脉大者.尺之皮膚亦賁而起.脉滑者※.尺之皮膚亦滑.
脉濇者.尺之皮膚亦濇.凡此變者.有微有甚.
故善調尺者.不待於寸.善調脉者.不待於色.
能參合而行之者.可以爲上工.上工十全九.
行二者爲中工.中工十全七.行一者爲下工.下工十全六.
黄帝曰はく.願わくは卒に之を聞かん.岐伯荅えて曰はく.
色青は者.其の脉絃なり也.赤は者.其の脉鉤なり也.黄は者.其の脉代なり也.
白は者.其の脉毛なり.黒は者.其の脉石なり.
其の色を見て而して其の脉を得ず.反って其の相勝之脉を得る.則ち死なり矣.
其の相生之脉を得る.則ち病已むなり矣.
黄帝問いて岐伯に曰はく.五藏の生ずる所.變化の病形は何如なるか.
岐伯荅えて曰はく.先ず其の五色五脉之應を定めて.其の病乃ち別つべきなり也.
黄帝曰はく.色脉を已に定めて.之を別つには奈何.
岐伯曰はく.其の脉の緩急小大滑濇を調える.而して病變定まる矣.
黄帝曰はく.之を調えるいかん.
岐伯荅えて曰はく.脉急は者.尺の皮膚亦た急んり.脉緩は者.尺の皮膚亦た緩.
脉小は者.尺の皮膚亦た減にして而して少氣なり.脉大は者.尺の皮膚亦た賁にして而して起つ.
脉滑は者※.尺の皮膚亦た滑.脉濇は者.尺の皮膚亦た濇なり.
凡そ此の變は者.微なるもの有り甚なるもの有り.故に善く尺を調えるとは者.
寸を待たず.善く脉を調えるとは者.色を待たず.
能く參合して而して之を行なう者.
以って上工と為すべし.上工十に九を全くす.二を行う者は中工と為す.中工十に七を全くす.
一に行う者は下工と為す.下工は十にして六を全くす.
※賁とはフン。派手に彩る意。大きく膨れる。
まとめ
本日は
鍼灸の聖典、霊枢または鍼経邪氣藏府病形 第四 前編
について説明してきました。
次は後編に続きます。
本日も最後までご覧いただきありがとうございました。
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